上水道の民営化は時代に逆行している【思うこと】

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7月5日に、宮城県議会で水道事業の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」が、県議会本会議で可決しました。上水道の民営化は日本国内の自治体で初めてのことになります。

みやぎ型管理運営方式とは何か

上水道、下水道、工業用水道の3つの水道事業をひとまとめにし、20年間の運営権を民間企業に売却するものです。

今回の民間委託は、「コンセッション型」といって完全に民間に水道事業の管理を移譲するのではなく、あくまで運営権のみを民間に任せ、水道管の所有権などは引き続き自治体が所有するので、完全な民営化ではないようです。

みやぎ型管理運営方式構築に向けて – 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)

民間委託の背景は増大する水道所業の負担

自治体が民間委託を推進する背景には、水道事業の負担が増大しており、自治体の財政を圧迫しているためです。自治体は水道事業を切り離すことで、財政の健全化を測ることが出来ます。

水道事業は地域独占事業であるということ

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水道事業は限られた水源を地域の利用者に分配する事業です。水道事業者はその地域における水の供給を独占して行うことになります。

すると、その事業者しか水を供給することが出来ないので、水質の悪い水でも、水道料金が高くなっても利用者はそこから水を買うしかなくなってしまいます。

民間企業は営利団体

民間企業は、営利団体です。営利団体の目的は、利潤の最大化です。つまり、儲けることが民間企業の一番の目的となります。競争相手のいない独占市場で営利団体がすることは、製造コストをさげること、販売価格を上げることの2つです。

製造コストを下げる

競争が起こっている市場では、製品の質は大切な要素です。なので、営利団体は競合他社に負けないように赤字にならない範囲で製品の質を上げる努力をします。

しかし、競争が起こらない市場では、需要があるかぎり営利団体は製品の質を落としてでもコストを下げることに注力します。その方が儲けが大きいからです。

販売価格を上げる

同じ性能の製品がいくつかある場合、普通は一番安いものを選びますよね。しかし、1つしかなく、どうしてもその製品が欲しい場合はいくら高くても買うしかありません。水は生きるためには絶対に必要な物です。

営利企業は法律による規制や他の競合相手が出てこない限り、水道が利用できなくなるギリギリの金額まで値段をつりあげます。

水道事業のコンセッション契約の結果は見えている

水道事業を民営化する動きは、政府の働きかけによるものが大きいです。これは水道の利用量の減少、経験豊富な水道局員の減少、水道管の老朽化による維持コストの増加などが原因とされています。

しかしライフラインの最も重要な要素である水の供給を民間に売り渡すという行為は世界中で否定されている行為であることはデータが照明しています。

国として水道事業民営化法案を通して締まった今、私たち住民が出来ることは、情報を集め、行政をしっかりと監視することです。

今回のコンセッション契約で宮城県がどんな状況になっていくのか、それは今までの他国の都市の歴史が教えてくれるはずです。

世界的に見る水道の民営化と再公営化の流れ

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アメリカ・アトランタの事例

アトランタ市とユナイテッド・ウォーター社は1999年に水道事業のコンセッション契約を行いましたが、水道の質の異常な悪化、毎年のように上がる水道料金、ユナイテッド・ウォーター社の不真面目な経営が明らかになり、20年だったコンセッション契約はわずか4年でうちきられることになります。

フランス・パリの事例

1985年に2社に販売された水道事業は、水道利用料金が毎年値上がりし2008年には物価上昇幅を遥かに超える174%増となりました。その後の再公営化により、8%の値下げに成功しています。

世界的に見ても水道の再公営が起こっている

2000年から2014年までの間に、世界35ヵ国で民営化されていた水道事業が再び公営化された事例は180件にのぼります。

元記事:https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20181115-00104161/

情報元:https://www.tni.org/en/publication/here-to-stay-water-remunicipalisation-as-a-global-trend

水道事業は公営で行うべき

JR、道路公団、日本郵政など、色々な事業が民営化されてきました。水道事業がそれらと大きく違うのは、上水道は他に代替手段が無いということです。水道は競争相手がいない市場なのです。そうなると、民間企業の悪い面がもろに利用者を直撃し、水質悪化、利用料のつり上げが起こるのです。

水道関係のもろもろの問題は、民営化することで数字的には解決して見えますが、そんなことは全くないのです。問題解決には住民と自治体が納得して水道利用料などの改定を行っていくしかないように思えます。

参考サイト

宮城県みやぎ型管理運営方式の紹介ページ

宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)

yahooニュース

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20181115-00104161/

ココカラ

みんなの水が、企業のものになったらどうなる? 「水道民営化」を世界の事例から考える|KOKOCARA(ココカラ)−生協パルシステムの情報メディア
水は「公共財」なのか、それとも「商品」なのか? 今日本では、水道事業を民営化しようという動きがあります。一方で、一度は民営化した公共サービスの「再公営化」も世界で広がっています。水道民営化について考えるためのヒントを専門家に伺いました。

東京の水連絡会

水道民営化で世界の都市が舐めた辛酸 その1 ~アメリカ・アトランタ市の水道再公営化の経緯~ - 東京の水連絡会

TNI

Here to stay: Water remunicipalisation as a global trend | Transnational Institute
In the last 15 years there have been at least 180 cases of water remunicipalisation in 35 countries, both in the global North and South, including high profile ...
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